「お世話になっております」
また営業電話だ。第一声を聞くより先にあった嫌な予感があたる。失礼にならないように注意して電話を切ってから、小さく溜め息をこぼす。
直後、またスマホが鳴る。来週飲みにいく友人からだ。電話がくるのは珍しい。口元を緩ませてスイッチをおす。会話には、話しはじめる前から香りがあるらしい。親しくても、良い香りがする電話ばかりじゃない。ぼくが誰かに電話したときにも、こんなふうに笑ってもらえるだろうか。
直前まで、別の仕事に手をつけていたかも。ちょうど洗い物をはじめたところかもしれない。そこに突然、僕からの用事があらわれる。いや、考えてみれば、彼からの電話も突然だった。ただ、心当たりがあった。
香りは、昨日のLINEからしていた。